キエコ様









明日は・・・










「あかねぇっ、あかね!!」
 ドタドタと騒々しい足音ともに、天真の声が聞こえてきた。
「どうしたの、天真君?」
「お前、本気かよ? 本気で明日……」
「あ、藤姫から聞いたの?」
 エヘヘと照れ笑いを浮かべたあかねは、幸せいっぱいという風情だった。そんな表情を見て、天真は次の言葉を言えなくなってしまった。
「ダメだ……」
「『ダメ』ではありませんわ、天真殿。神子さまを引き止めてくださいませ」
「そう言ったってよぉ、あいつのあんな顔見て『やめとけ』って言えるのか?」
 満面の笑みで、得体の知れない鼻歌を歌う姿を見て、藤姫はうっと言葉をつまらせた、顔を歪ませる。
 泣きそうになった藤姫の姿に、あかねはようやく現実の世界に戻ってきた。
「藤姫? どうかしたの? ちょっと、天真くん何したの?!」
「俺かよっ」
「違うんです、神子様。明日のことで……」
「明日がどうかしたの?」
 無邪気な顔で聞き返され、やっぱり「やめてください」なんて言えなくなってしまう。口篭もった藤姫にかわり、天真が「え〜と、ほら」と言葉をつなげる。
「日が悪いって、さ」
「え、そうなの?? じゃぁ、別の日がいいかな? やっぱり大事な日だし、そういうのって決まりがあるんだよね」
 あっさり天真の嘘を信じてしまうあかねに、藤姫は罪悪感を感じつつも「そうですね、やっぱり日を選びませんと。しばらくは無理かと…」なんて言ってしまう。
 途端、顔を曇らせたあかねを見て、早くも二人は後悔してしまう。
「こらこら、二人とも。冗談はそのくらいにしなさい」
 笑いを含んだ声。けれど、どこか恐ろしいものが潜んでいるようだった。
 ビクッと身体を硬直させた二人は、恐る恐る背後を振り向いた。もちろん、声といいあかねの反応から、それが誰かわかっている。しかし、それを確かめずにはいられなかった。
「友雅…」
「友雅殿…」
「あんまりあかねをからかうと、私が承知しないよ」
 優しい声音に、ゾクリと背筋を震わせる二人の隣で、あかねは満面の笑みで友雅を迎えていた。
「よかった、明日はダメっていうのは冗談だったんだ。もう、藤姫も天真くんも意地悪〜」
「もっとも、日が悪くったって私は気にしないけどね。ここからさらっていくよ。やっと色よい返事をもらったのだからね」
 愛おしげにあかねの髪を撫でる。けれど、その視線は不敵に光っていた。
「こいつならやりかねない…」
「酷いですっ、友雅殿。今は妻問が一般的ではありませんか、今まで通りこちらに通ってくだされば―――」
「でも、あかねは一緒に住んでくれるっていうんだから。明日は私のところに連れて行くよ」
「ごめんね、藤姫」
 そう言ってあかねは謝るが、その手は着物を控えめに掴んでいた。その仕草からあかねの心情を窺い知れる。
「大丈夫、毎日だって遊びに来るから」
 にっこり笑ったあかねの後ろで、友雅も笑っていた。まるで「そうできるかな?」とばかりに何かを企むような不穏な気配のする笑みだった。
 背筋を震わせる天真と激しく落ち込む藤姫を尻目に、あかねは拳を振り上げた。
「よ〜し、明日は張り切って引越しだ!!」















サイトの引越祝いに、キエコさんから頂きました。ありがとうございました〜♪

うふふ…やっぱり、天真くんと藤姫はあかねちゃんに勝てないのよね〜。もちろん、友雅さんもだけどっ!
メロメロリンな2人と、奔放なあかねちゃんが素敵です。
もちろん、毎日のように土御門に遊びに行けるはずなどあるわけもなく…。
毎日昼過ぎまで褥に横になっていなくてはならない彼女に合掌。ちーんっ
本当に、ありがとうございましたっ

〈麻桜〉



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